【本の感想】嘘つきアーニャの真っ赤な真実(米原万里)

このところ本の感想は、米原万里さんの著書が続いていますが、一応今回で一区切りです。「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」は、前回の「魔女の1ダース」などに比べて、重い話題というか、歴史や国家などについて考えさせられる本です。

 

3編の話から構成されていて、どれも、米原さんが在プラハ・ソビエト学校に通っていた頃の友達の在学中のエピソードから始まり、数十年後に再会し、その間のそれぞれの人たちの人生が語られています。時代や国や、国際的な駆け引きに翻弄され波瀾万丈の人生を送り、それぞれ、必死に自分を(武力的にと言うより精神的に)守る姿には、国や民族、愛国心、そして、そもそも人間とは、とか、人生について考えるきっかけをあたえてくれるものです。

米原さんが在学していたプラハ・ソビエト学校には東側の国を中心に50カ国もの国籍の学生が通っていたそうです。当時、東側の国々で海外に住んで、海外の学校に通っている子どもというのは、親が共産党の幹部などがほとんどで、国作りというか歴史に関わっているような人たちです。

その辺りの話を読むと、歴史の授業では、習わない深い深い歴史に興味を持つきっかけとなる本かもしれません。特に1989年のベルリンの壁崩壊以降の東側の国々については非常に興味深い話が多かったです。

 

本のタイトルにもなっている、「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」という話では、ルーマニア人のアーニャが主人公の話です。彼女はクラスで一番、自国を愛し、共産党のスローガンを本気で信じて、それをみんなに自慢するような子でした。しかし、アーニャの親は共産党の特権階級の人で、とてつもない贅沢な暮らしをしていました。いわゆる共産党が掲げていた不平等のない社会、労働者のための国というようなスローガンとは全く違う生活です。

数十年後に再会したとき、(クラスで最も共産主義思考の強かった)アーニャはイギリス人と結婚してイギリスに住んでいるのですが、そこに至るまでの、アーニャの変化、アーニャの両親の葛藤、共産主義体制の矛盾、ヨーロッパでの民族問題などなど(実はアーニャはユダヤ人だった)、興味深く考えさせられることが盛りだくさんな本です。

私がこの本を読んでいるとき(特に第二編の嘘つきアーニャの真っ赤な真実の後半)、半ページ読む毎に、ネットで検索したり、歴史の本を開けたりしながら、国や民族の歴史的背景や、人物のつながりなどを調べながら読んだため、実際、この本を読み終わるまでに、この本の2倍くらい文章を読みました。

 

今も民族問題が絶えないヨーロッパ諸国についてや、旧東ヨーロッパ諸国の近代史(特に1980年以降)などに興味のある方には、ぜひオススメの一冊です。


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)
嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫) 米原 万里

おすすめ平均
stars民族・人種の理解に
stars発見したのだが、
starsまっさらな自分になれる本。
stars政治に翻弄されながらも、それでも子供は育つ
stars小説以上にエキサイティング

Amazonで詳しく見る by G-Tools

コメントする